本山先生エンドマスターへの道

2016.11.23更新

こんにちは。
三鷹市 ハートフル歯科医院、ハートフルデンタルクリニック、三鷹ハートフル小児歯科歯科医院、
三鷹ハートフル矯正歯科医院を含む、
ハートフル総合歯科医院グループ 
歯科医師 本山です。

 

“第2回米国歯内療法専門医 日本協会セミナー”

参加してきました。

米国歯内療法専門医セミナー

このセミナーは石井先生をはじめとする

5人の米国歯内療法専門医の先生方が

最新のトピックスを含めて各々御講演して

いただきました。

 

今回はその中から一つのトピックスについて

書きたいと思います。

「リバスクライゼーション」です。

田中浩祐先生が“歯内療法領域の再生療法”と題して

御講演して下さいました。

再生療法と言えば、山中伸弥教授の

iPS細胞が有名ですが、

リバスクライゼーション?、

何だか耳慣れないこの言葉…

しか〜し、最近話題のトピックスなのです。

リバスクライゼーションは、

歯根未完成歯における歯髄の治癒のパターンの

1つです。

パルプ・リバスクライゼーション

(pulp revascularization)は、

いったん死んだ歯髄組織

(=虚血性変化に陥った歯髄組織)に

根尖孔から毛細血管が増殖(再生)し、

それにともない歯髄組織由来の

細胞が再生着(repopulation)するような

治癒のメカニズムを指します。

新生した組織は電気歯髄診断に正の応答を示すが、

やがて急激な石灰化を起こし歯髄腔が閉塞するのが

最終的な治癒像と言われています。

 

一般的には我々の身体にどこか傷ができて

血が出るとそこに血餅ができてかさぶたになり

治癒していきます。

出血は治癒するために必要なものであり、

悪いものではないと通常は考えます。

しかし、根管治療の場合は根管内から

出血してきたりすると

我々は焦ってしまうものです。

とかく、根管治療においては“出血”は嫌われる

傾向にあります。

一般的な創傷治癒においては出血は非常に大切な

プロセスであるにも関わらずです。

そこで、根管治療においても

根尖孔外で意図的に出血を起こし

根管内へ血餅を誘導し、その上にガッタパーチャで

根管充填を行い病理組織切片をつくり、

血餅があったところがどのような治癒を

していたかを確認してみました。

それによると、そこには線維性組織や

セメント質用組織ができていたそうです。

このことより、出血を起こし根管内へ血餅を

誘導することに害はないのではないかという論文が

50年以上も前に問いかけとして

発表されていたそうです。

 

ここから、さらに再生療法について

聞いてきたことを書いていきます。

再生療法は大きく分けて二つに分かれます。

細胞依存性細胞非依存性です。

前者は外来性の未分化幹細胞を根管系へ移植し

組織再生を促すもの、

後者は内在性の細胞を根管系へ誘導して

組織再生をおこさせるものと言えます。

幹細胞(Stem Cell)が働けるだけの

scaffold(足場)があり、そこに貼り付いて

分化したり増殖できるような場所が

揃っていた時にtissue engineering(再生医学)が

可能になるわけです。

このことを歯に置き換えていきます。

口腔領域において発見されているいくつかの

Stem Cellがあります。

どれに変化するかというのもそれぞれ

異なっています。

これらをエンドではどのように

行なうかという話をする前に

“根未完成歯”について

ふれたいと思います。

konmikansei

根未完成歯の治療法においては、

アペキシフィケーションアペキソゲネーシス

あります。

根未完成歯は、例えるならば底が抜けたバケツの

ようなものです。

では、根が未完成なのでそのままでは

根充できないのか?

当然そこに根充材を入れてしまうと、

歯周組織へと漏れてしまいます。

そのような状態に対応するのが、

アペキソゲネーシスと

アペキシフィケーションです。

アペキシフィケーションとは、根未完成歯において

失活(神経が壊死して死ぬこと)して

region(病変)があり、その場合に根尖を何とかして

閉鎖したい時に用いる治療法です。

アペキソゲネーシスとは、例えば虫歯があり

それが神経に非常に近く、場合によっては

抜髄になるかもしれないケースであるとします。

しかし、根尖が開いており抜髄すると根が

今後成長していくにあたり

いづれ根管壁が厚くなり、

歯髄腔がもう少し細くなり本来であれば

根の成長が行われるところに抜髄してしまうと

その成長は止まってしまいます。

その場合に何とかして歯髄を残して

成長を促したい時に用いるのが

アペキソゲネーシスです。

 

<まとめ>

-アペキシフィケーションと

  アペキソゲネーシスの違い-

アペキシフィケーションは、無髄の根未完成歯に

適用されます。

神経は壊疽や壊死を起こしています。

そのため、ラッパ上に開いた根尖は

セメント質によって閉鎖されることは

ないと言えます。

そこで水酸化カルシウム製剤などを利用して、

骨様象牙質や骨様セメント質により

根尖を閉鎖します。

これは骨に限りなく近い組織と言えます。

一方アペキソゲネーシスは、生活歯髄が残っている場合に適用されます。

その際、ラッパ状に開いている根尖を

生物学的に閉鎖させます。

これは生活歯髄の中に、象牙芽細胞が

存在しているため可能となります。

天然の歯に限りなく近い組織で、

根尖を完成させるということになります。

ちなみに、どちらの処置法においても

根尖が閉鎖された時点で、改めて抜髄および

根管充填を行うことが推奨されています。

つまり、アペキソゲネーシスでは最後まで

歯髄を残すことが目的ではないと言えます。 

根尖をできるだけ自然に近い状態に

持っていくために、行っているわけです。

 

どちらも使用する材料は、水酸化カルシウムを

用います。

最近ではMTAを使用するようにもなりました。

ただし、アペキシフィケーションも利点もあれば

欠点もあります。

根管内の無菌化を図るべく入れる

水酸化カルシウムにより、長期間の経過観察のもと

根尖の閉鎖が行われ、regionの縮小も

認められていきます。

しかし、根尖部の閉鎖は行われましたが

根管壁の厚みは一貫して変わらないのです。

つまり、薄いままというわけです…

最終的には破折のリスクが高まるのです。

これが一番の欠点であり、

またアペキシフィケーションは

デンティンブリッジができるのに

最低1年はかかりますから、

治療期間は長いとも言えます。

水酸化カルシウムの強アルカリによる殺菌力を

期待する反面、長期間になると象牙質の歯質を

弱くしてしまうという欠点があり、

それに加えて薄い根管壁のまま推移していくため

歯頚部付近における破折が起こるわけなのです。

これを克服しようとして

用いられるようになったのがMTAなのです。

MTAの場合は水酸化カルシウムのように

複数回交換する必要がありません。

しかし、これで問題解決とはいかないのです。

回数は少なくなり、治療の期間は短いという欠点は

克服されたのですが、

根管壁の厚みだけは変わらないままとなります。

外力が働いた時の破折のリスクだけは

残る形になってしまいました…

どうにかしてこの薄いままである根管壁を

厚くできないだろうか、

また根未完成であれば歯根長が長くならないか、

長くなるように誘導できないかと臨床家や

研究者たちは考えました。

 

2001年に我が国からリバスクライゼーションの

最初ケースレポートが出ました。

臨床所見として13才の女の子、

右下第一小臼歯の根尖付近の歯肉に

sinus tractが認められました。

レントゲン写真においては根尖部透過像、

また中心結節の破折ありということでした。

そして、歯には生活反応が認められず、

その結果根尖性歯周炎という診断に

なったとのことでした。

麻酔を行わずに髄室開拡をしたところ、

わずかに痛みを訴えとのことで

著者はもしかしたらこの根管系の中に

regionはできているが、

これだけ根尖が広くあいているので生活歯髄、

生きている組織があるのではないかと考え、

通常どおりファイルなどの器具で

根管を触ると生きている組織を

傷つけるのではないかと判断し、

機械的な作業を上部だけに行い、

完全な機械的拡大を行わなかったそうです。

髄室開拡時に排膿を認め、

それを開放処置にして2回目の来院時に

sinus tractの消失を確認したそうです。

2〜5回目には根管洗浄を行い、

洗浄後根管貼薬剤としてメトロニダゾールと

シプロフロキサシンの抗菌薬を混ぜたものを

使用したそうです。

なぜ、抗菌薬を使用したかと言うと

水酸化カルシウムの長期使用による

歯質の脆弱化の欠点があったため、

また抗菌薬による無菌化が認められた

データが過去にあったこともあり

選択したわけです。

5回目には根管内に軟組織が下から

出来上がってきているのが

確認されたそうです。そして、そこにブローチを

おいたところ痛覚を訴えため、

新しくできた組織には感覚があるということが

分かりました。

壊死したものではないという確認が

とれたというわけです。

6回目にはビタペックス、グラスアイオノマー、

レジンにより封鎖しその5ヶ月後には

レントゲン写真よりデンティンブリッジが

形成されているのが確認できたそうです。

30ヶ月後には封鎖したものを外して

リエントリーし、デンティンブリッジに

電気的歯髄診を行ったところ、

生活反応が確認できたという

ケースレポートでした。

このケースにおいては、根管壁の厚みと

しっかりとした根管長が

認められたとのことでした。

このケースレポートから3年後に

2例目のレポートが出されました。

1例目と違うところは、根管内に探針を入れて

意図的に出血を起こさせ、

50年前の論文を背景にtissue engineeringを

持ち込んだところにあります。

血餅を使い、足場にしたというわけです!

CEJよりも3mm下で出血が止まったことを

確認してこれが血餅になるまで

何分か待ち、その上にMTAをおきます。

この後、予後を経過観察していき

最終的には2年後には

生活反応があるところまで

確認できたとのことでした。

 

最後にAAE(米国歯内療法学会)の再生療法を

行う上での推奨事項について

ふれて終わりたいと思います。

1.若い患者であること

2.壊死歯髄であり、根未完成歯であること

3.機械的拡大は行わないか、

 もしくは行ったとしても

 必要最低限にとどめること

4.血餅をつくること

 あるいはたんぱくの足場になるようなものを

 根管内に入れること

5.緻密な封鎖を得られるもので封鎖を行うこと

 

リバスクライゼ―ションを行う上で指標となる

キーワードは“歯根未完成歯”となります。

それでは一体どの程度の歯根未完成具合であれば

処置を行えば良いのか?

その根拠となる論文において、

脱臼した歯を再度再植してリバイタルゼ―ションが

起こった歯と起こらなかった歯の

歯根の未完成具合、根尖の開き具合が

何mmかというのを調べた結果、

1.1mm以上必要という結果が出たそうです。

また、機械的拡大を最低限にするというのは、

根管内は壊死していますから細菌がいます。

細菌がいる場合は再生は起こりません。

無菌化が達成されていないと、

再生は起こらないのです。

機械的拡大を行わないで無菌化を図るためには

洗浄が必要となります。

1.5%の次亜塩素酸ナトリウムと

17%のEDTAの併用が一番良いという

結果が出ているそうです。

封鎖はMTAがベストです!

リバスクライゼ―ションを行った歯は、

歯根幅径が25~30%、歯根長も15%ほど

成長したという報告もあるそうです。

最近の報告ですと、ペンシルバニア大学の

outcome studyにおいて、

complete healingは75%、

incomplete healingは14%

それらを合わせると約90%近く成功しているという

報告があります。

しかし、リバスクライゼ―ションのstudyは

まだ数が少ないため問題があります。

長期予後を評価するランダム化臨床試験が

ほとんどありません。

そして、標準化された治療法の確立はなく、

最終的な結論には至っていないという

ことなのです。

それがないと、術者によって違いがでるため

予後の正確な評価ができないということに

なります。

それでも今後、期待される治療法の一つであり、

再生療法と言いますと最新の器具を使用してという

こともありますが、この治療法は血餅を意図的に

つくるといったものであり、決してハードルは

高くないと言えます。

 

再生療法においてはその発展はめざましく、

歯内療法領域ですでに応用が試みられていること、

今後の展望などについて今回のセミナーで

教えていただくことができました。

 

長文にて失礼致しました。

 

“すべては患者様の笑顔のために”

今後ともよろしくお願い致します。

投稿者: 本山 直樹

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